2019年の個人的ベストアルバム
まず、この記事の前提として
・2019年にリリースされたアルバムではなく 2019年に僕が出会ったアルバムの中から選出
・アルバムの完成度や曲ごとの評価ではなく完全に個人的な好みで選出
・ランキングではないのでアルバムごとに優劣を決めたものではない
と言うことを踏まえた上で読んでください
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n-buna / 『花と水飴、最終電車』
まずはボカロPであるn-bunaの1stメジャーアルバム作品。ボカロPなのでもちろんボーカルはVOCALOIDです。
尖った様なギターサウンドなのに全体の雰囲気が聴いてて安心して眠れそうな優しい音に仕上がってるアルバムです。
VOCALOIDの声はあくまで機械だから迫力に欠けるのが欠点かなと思っていて、極端に言えばパンクとかメタルは100%歌いこなせないはずです。
ただ、このアルバムはその欠点を上手く強みに変えられている曲ばかりだなと感じます。声が軽くて迫力が出せない、裏を返せばか細い声だからこそ切なさや感傷的な心中を表現するのにはもってこい。
実際楽曲の歌詞は自分の伝えたいことが上手く伝えられず拗らせてたり、主人公の「君」へ向けた想いが伝わってしまった故に「君」が自分の元から去っていく、「君」を失う。といったマイナスイメージのあるものが多い印象。
また、VOCALOIDの声は重たくない(ある意味重いけれど)ので曲によっては爽やかな印象をストレートにぶつけられると思ってます。このアルバムの一貫したテーマとして恐らく「夏」の情景がある気がするんだけれど、夏の爽やかさを声と曲題と歌詞と音で聴き手を包み込む様に表現してくれているのがよく伝わってくる。
これは本当に聴いて貰えればすぐにわかると思うので是非聴いてください。値段も15曲入りで2000円の大特価!!
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 『ソルファ』
悲しいです。俺は悲しいです。もっとこのアルバムと早くに出会っていたかった。いや、アジカンと出逢いたかった。
11月くらいに新しい音と出会いたくて「名前順に未聴のミュージシャン取り繕って聴いていこうキャンペーン」と題して勝手にやり始め、第一弾に聴いたのがアジカンでした。
はじめにこの「ソルファ」を聴いて何というか言葉にならない衝撃というかそんな感じのを受けました。別に革新的な音楽であるわけでもなくシンプルにサウンドがかっこいいです。
初めて聴いた時はゴリゴリのギターロックという印象でした。歪ませたギターでジャカジャカゴリゴリいく感じ。恐らく「リライト」とかはパワーコードを多用してると思うんだけど、バンドマン最強!!感が凄いです。
たぶんだけど演奏技術的にそんなに難解なことはしてないのかなと思ってて初心者でもそこそこ練習すれば弾けるようになれるようなシンプルな感じがまた魅力なのかなと思ったりします。
とにかくこれは聴くに限るので己の耳で細部まで聴き取って欲しい。バンドってかっこいいぞ〜!!!
灰色ロジック / 『生活の柄』
このアルバム地元のタワレコでジャケ買いしたんだけど、今までジャケ買いしたなかで1番の当たり作品だと思います。
なんというか「優しい」としか形容し得ない音って感じで、激しさは無いけど情緒を揺さぶられる感覚に襲われるバンド。このアルバムしか聴いてないけど。
アルバム名が「生活の柄」ってだけあって何気ない普段の生活の一瞬を1つづつ切り取って集約するとこんな音楽が生まれるんだなと感動した。
久しぶりに真剣に歌詞カード見ながら音楽を聴いたし灰色ロジックを聴くと「邦楽ってのは歌詞にも音にも奥深い芸術があるんだな」って思わせてくれて幸せ。
THE NOVEMBERS / 『ANGELS』
恐らく僕が2019年に出会ったアルバムの中では1番気に入ってるアルバムがこれだと思います。
アルバムってのは曲順を守って聴いてこそアルバムであるわけだし、その曲順の中でどう起承転結やらストーリー性やらを生み出して曲同士を上手く繋いでって言う試行錯誤する中に、いかに自分達の拘りとか伝えたい事を凝縮出来るかが最終的に世間では「完成度」と言う形で評価されるのが常であるのは当たり前のこと。勿論単曲ずつがの出来が良くないとアルバム全体の「完成度」に影響するのは言うまでもないですよね。
こういう聴き方や作り方が結局正しいアルバムとの接し方なのは確かだろうけれど、このアルバムはそれを全て踏まえた上で一歩も二歩も奥へ手を伸ばしてる気がするんです。
9曲で36分という表現としては短い時間の中に荒々しさと妖艶さが共存してるのがこのアルバムの魅力であって聴き手への攻撃力。別に耳が痛めつけられる程の爆音という意味の「攻撃力」というわけではなく、むしろその逆で荒々しい爆音と妖艶さがうまい具合に調和しあって「美しさの暴力」って言う表現が出来る音が完成してる。
僕は音楽のプロではないので詳しい事はあまり理解できていないけれど、恐らくこのアルバムが完成するまでに幾つもの拘りを詰め込んで何度も納得いくまで作り直して録り直してっていう良い意味で神経質であろう作り手の苦労をひしひしと感じられて感無量だった。
ヨルシカ / 『だから僕は音楽を辞めた』
1.8/31
2.藍二乗
3.8月、某、月明かり
4.詩書きとコーヒー
5.7/13
6.踊ろうぜ
7.六月は雨上がりの街を書く
8.五月は花緑青の窓辺から
9.夜紛い
10.5/6
11.パレード
12.エルマ
13.4/10
14.だから僕は音楽をやめた
恐らく皆さん既知であるだろうけれどヨルシカは前述したn-bunaとボーカリストsuisのロックバンドです。全楽曲の作詞作曲編曲をn-bunaが担当しているので曲調やら雰囲気やらはボカロPの頃と大差はないです。
アルバムの概要としては「音楽を辞めた少年がエルマという女性と出会ってから旅をしながら手紙を綴った」というストーリー仕立てになっています。
アルバム制作において曲順で聴くことでストーリー仕立てに完成する手法を取る事は珍しくないし腐る程そんな作品が現世に存在するわけだけれど、このアルバムはその極地に達した作品なんではないだろうかと僕は勝手におもっています。
ただ、ここでアルバムの曲順を見てもらえると分かるが不思議な点がある。このアルバムのコンセプトは「音楽をやめた少年が旅をしながらエルマへ手紙を綴る」というもの。
おかしい点はここにあって、「音楽を辞めた少年が」書いた手紙の内容ならば14曲目の「だから僕は音楽を辞めた」が冒頭の曲として並ぶはずではないですか?そもそも、曲順通りにこのアルバムの曲達を聴いて行っても物語の時制が整わないのです。このアルバムはストーリーの時制をぐちゃぐちゃにされてるのです。
じゃあ、何でそんなことをするのかと思って調べたら「少年がエルマへ書いた手紙」という設定を強調する為のものらしく、少年が箱の中に手紙を並べた順番であるらしいです。
なら物語の時制がを整える為にはどの順番で聴くのが良いのかとなると、それはここで書くのは控えたい。是非自分でCDを買ってスマホにインポートするなりCDデッキやプレイヤーで聴くなりして考察してみて欲しい。
ヒントはインストである「8/31」・「7/13」・「5/6」・「4/10」という日付が明記された楽曲達。これらが既存のアルバムでは普通とは反対の時制で並べられてる点にも注目して歌詞などを参考に考えてみて欲しいです。あとは、もし機会があれば初回限定版に付随している「エルマへ向けた手紙」を入手してみて欲しい。ここに本当の答えが書いてあるので。
本当にエンターテイメント性の高いアルバムであり、かつ音の面でもピアノとギターのグルーヴやボーカルの表現力の高さがはっきりとわかりやすく伝わる素晴らしいアルバムだなと思います。